研究概要 |
今年度の研究成果は大別して以下の3項目にまとめられる. まず第1に,高次元長方形領域に置ける偏微分方程式の平衡解の厳密な数値計算法の開発を行ったことが挙げられる.これを2次元および3次元領域で定義されたSwift-Hohenberg方程式とCahn-Hillard方程式の定常問題に対して適用して結果を得た.これはJean-Philippe Lessardとの共同研究で,以前に行った1次元の場合の結果を拡張したものである. 第2の研究成果は,多次元パラメータを持つ写像族に対するConley指数の計算を行ったことである.これは多次元パラメータ族の問題を,多価写像を介してある種の組合せ多価写像に対する問題に還元することによって計算がなされる.すなわち,この組み合わせ多価写像からMorse集合の外近似を求めて,それのホモロジーConley指数を計算するのである.本研究では,これまでの計算アルゴリズムを改良して,より高次元の空間上で定義される写像や,円筒のようなこれまでのアルゴリズムでは扱えなかったトポロジーを持つ空間に対しても適用できるようにした.また,この新しいアルゴリズムを用いて,bouncing ballの結合系,logistic写像の大域結合系,さらに3次元空間上で定義されるある種の生物モデルに対する計算を開始した. 第3の研究成果は,3次元燃料電池の位相的構造の解析である.我々はホモロジーなどの位相計算的方法を用いて,燃料電池の連結性などの位相的性質を解析した.このような位相的性質についての情報は,燃料電池の性能を決定するために本質的に重要である.我々はまたここで開発した方法を,固体酸化物形燃料電池のカソードとアノードでの反応の3次元再構成に応用して,いくつかの結果を得た.
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