平成20年度においては、本研究では、低緯度・赤道域電離圏に発生する赤道スプレッドF現象(Equatorial Spread-F;ESF)や中緯度域に現れる伝搬性電離圏擾乱(Traveling Ionospheric Disturbance;TID)について、衛星-地上のビーコン観測を用いて研究を進めた。まずソフトウエア無線専用のオープン・ソフトウエア/ハードウエアを利用した衛星ビーコン観測用のディジタル受信機GRBR(GNU Radio Beacon Receiver)の開発を進め、システム構成と初期観測結果を論文発表すると共にwebページから公開した。次に2008年7〜9月の期間に、潮岬-信楽-福井を結ぶ3地点のネットワーク観測を行って、トモグラフィ解析から電子密度の緯度・高度分布の推定を行った。これによって、TIDに伴う電子密度変動の緯度・高度分布を推定することに成功した。また統計的な解析から、日本付近の夏季においては、緯度40度付近の電子密度が日中よりも夜間のほうが大きくなるという特徴を発見した。衛星観測データを活用することで、これは、南極付近において顕著な現象が北半球においても現れていることを明らかにした。2009年1月からは、ESF研究を推進するため、インドネシア・タイ・ベトナムに各1点ずつGRBR観測拠点を整備した。これによって、低緯度電離圏観測に特化した衛星C/NOFSを活用することによって、ESF発生の日々変動に向けた研究を今後進める基盤を整備することができた。
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