研究概要 |
水系あるいは極性溶媒系におけるミセルの研究は数多く行われているが、有機溶媒系での逆ミセルについての研究は少ない。イオン性界面活性剤の場合、水の存在がないとイオン性基が解離できないこと、また、ポリオキシエチレン型の非イオン界面活性剤の場合、ポリオキシエチレン鎖は多くの有機溶媒に可溶であることなどにより有機溶剤系においては両親媒性を発揮しない界面活性剤が多い。そのため、多くの界面活性剤や脂質は単独では有機溶媒系における界面吸着や分子集合体形成をしにくい。この問題を解決するために水素結合力が非常に強く、有機溶媒中でも自己集合しやすい多価アルコール型の非イオン脂質・界面活性剤(グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル)を用いた。これにより各種炭化水素中において逆ミセルの形成を行なうことができた。逆ミセル構造の解析には炭化水素コア部と溶媒の電子密度差が大きいことを利用し、小角X線散乱によるその場・非破壊解析を行った。データ解析は一般化非直接フーリエ変換(Generalized Indirect Fourier Transform, GIFT)法を用い、モデルフリーに実際の逆ミセルサイズを求めることで行なった。モノおよびジグリセリン基を疎油基とした界面活性剤の各種油中での逆ミセル構造を調べたところ、疎油基サイズが大きいほど、また、油の分子量が大きいほど長い棒状逆ミセルが形成されることを明らかにした。さらに、これらの棒状逆ミセルは微量の水を加えることで球状へ転移することも明らかにした。
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