1.タケノコモノアラガイ(Lymnaea stagnalis)の右巻系統と左巻系統を交配し、体形に関与する量的遺伝子を共通にもつ右巻と左巻を作成した。タケノコモノアラガイは、右巻と左巻の交尾が可能な同時雌雄同体である。右巻遺伝子のホモ接合体DDと左巻遺伝子のホモ接合体ddを交雑し、Ddを得た。左右極性は母親の核遺伝子型が決定する。ゆえに、ddが産むDdは左巻に、DDが産むDdは右巻になる。これにより、両親の核ゲノムを共有し、巻型の遺伝子型も同一のDdでありながら、左右反対に発生する個体が得られた。 2.照射光式の高倍率実体顕微鏡を用い、卵殻から胚を出さずに、卵殻の外から胚を経時撮影し、螺旋度と以降の形態変化を個体ごとにデジタル計測を実施した。このために、デジタルカメラを設置した倒立顕微鏡のもとで、胚の動物極をまず極体が放出される位置から判定し、その動物極が真上になるように胚を定位する手法を新たに開発した。 3.螺旋度計測個体ごとに孵化・成長・産卵率、殻の形の計測を行った。Ddが体重1gに達した時点で、殻の10部位を測った。実験集団を用いた予備研究から、左右二型が鏡像対称からは統計的に異なる形に成長することが明らかである。しかし、殻の定位には、くり返し同一の殻を撮影し、測定しなおしても同じ測定値が得られるように厳格に定義した方法により、測定者にかかわらず同一の測定値が再現されることを確認してから本測定を実施した。
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