イネから単離された外向きと内向きケイ酸トランスポーターLsi1とLsi2の輸送基質特性を明らかにするために、異なるpH下で野生型とケイ酸トランスポーター遺伝子欠損変異体によるケイ酸吸収量の比較を行った。その結果、ケイ素がアニオンとして存在するpH(11.0)においても、ケイ素が無電価の分子状の形態として存在するpH(6.0)においても野生型のケイ酸吸収量は変異体より高く、pHによる吸収量の変化は見られなかった。これらの結果は根圏のケイ素がケイ酸かケイ酸塩かを問わず、Lsi1、Lsi2によって吸収されることを示唆している。 またケイ酸トランスポーター遺伝子の発現制御機構を明らかにするために、ケイ酸吸収能力の異なるオオムギ10品種を用いて、ケイ酸の前処理に対する遺伝子の発現量とケイ酸吸収量の変化を調べた。その結果、多くの品種は前処理によって、ケイ酸吸収量が低下し、HvLsi2の発現量も減少した。しかし、一品種のみケイ酸の吸収量も遺伝子の発現量もケイ酸の供給によってほとんど低下しなかった。それぞれの品種のプロモーター領域をInverse-PCRで単離して、比較を行ったところ、幾つかの違いが品種間で見つかった。さらに、各品種のケイ素関連遺伝子の発現量と穀粒中のケイ素濃度を比較した結果、相関が見られなかった。このことは穀粒中のケイ素集積の品種間差は単一の遺伝子の発現量で説明できないことを示唆している。
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