本研究では、高強度バイオ材料を木材表面に積層することによる軽量高強度木質材料の開発を目的としで研究を行っている。これまで樹脂含浸木材を横圧縮することで高強度材料を製造してきたが、今年度はバングラディッシュの未利用バイオマス資源である"エビ殻"に着目し、そこからの高強度バイオ材料製造を試みた。すなわち、エビ殻やカニの甲羅の基本骨格物質であるキチンは、木材細胞の基本骨格物質であるセルロースによく似た化学構造を有しており、セルロースと同様に幅20nm程度のナノフアイバーとして存在している。この結晶性ナノファイバーを簡単な方法でエビ殻やカニ甲羅から抽出する技術を世界で初めて開発すると共に、それをシート化し性能評価を行った。カニ甲羅粉末から炭酸カルシウムおよびタンパク質を除去後、酢酸でpHを4に調整後、ブレンダーにより高速撹拌を行ったところ、カニ甲羅粉末を幅20-50nm程度の均一ナノファイバーにまで解繊できた。フィルターで濾過してキチンナノファイバーシートを作製し、透明アクリル樹脂を含浸硬化したところ、セルロースナノファイバーシートを用いた場合と、同程度に透明で、かつ高弾性・高強度のシートが得られ、高強度バイオ材料として積層シートに用いることが出来ることが知られた。次年度は、キチンナノファイバーをその形態を保つたまま、抗菌性を有するキトサンナノファイバーに変換する技術開発を進め、高強度で高機能のバイオシート材料の開発を目指す予定である。
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