研究課題
キラルホスフィン配位子は、様々な不斉触媒のキラル源として極めて重要な位置を占める。しかしながらその合成は非常に困難で、エナンチオ選択性の最適化のために多様なキラルホスフィン配位子を簡便に合成できる方法論の開発が急務である。特に我々の研究室で開発したキラル1価銅触媒は、アリル化、アルドール反応、アルケニル化、アリール化、アルキニル化、シアノメチル化等の様々な有用炭素骨格構築反応を促進するものの、多くの場合エナンチオ選択性が80〜90%ee程度に留まっていた。市販の配位子のスクリーニングのみではこの状況を打破することができなかったために、独自のキラルホスフィン配位子の多様合成法の確立に着手した。基本となるコンセプトは、銅に配位し触媒活性部位を構築するホスフィンモジュールと、キラリティー発現モジュールを分離して、これら2つのモジュールを簡単な反応で連結するというものである。このコンセプトを基盤として、セミシクロファンをホスフィンモジュールの基本骨格に、容易に合成可能なキラル源であるアミノアルコールをキラリティー発現モジユールとして、これら二つを脱水縮合により連結する新規ホスフィン配位子を設計、合成した。現在までのところ、ケトンの触媒的不斉アリル化反応において最高で83%eeを発現する独自の不斉配位子を見出している。今後、両モジュールの最適化により、一般的に高い(90%ee以上)エナンチオ選択性を与える不斉配位子を構築していく予定である。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
J. Am. Chem. Soc. 130
ページ: 16146-16147