20年度はp57による造血幹細胞静止状態維持の分子機構を詳細に検討するために、その新規結合分子hsc70を同定した。 1)マウス骨髄由来の造血幹細胞をフローサイトメトリーで単離し、CDK inhibitorのmRNA発現を調べたところ、p57は特異的に高く発現することがわかった。また、蛍光免疫染色ではp57は細胞質で細胞周期制御因子cyclinDと共局在することを見出した。 2)p57タンパクのbinding partnerを探索するため、マウス骨髄から確立したEML造血前駆細胞株を用いてp57の細胞内強制発現実験を行った。MALDI-TOF mass解析でhsc70を新規p57結合タンパクとして同定できた。 3)さらに、hsc70のinhibitorデオキシスパガリン(DSG)を用いて実験では、DSGは造血幹細胞の静止期での維持を阻害することがわかった。これらの結果より、p57とhsc70、およびcyclinD三者の相互作用が造血幹細胞の細胞周期制御において重要な働きをしていると考えられる。 4)p57ノックアウトマウス胎生期の肝臓由来の造血幹細胞を用いて、放射線照射したマウスに移植するという実験系で検討を開始した。
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