研究概要 |
1.下痢症ウイルスの網羅的検査を効率的に遺伝子増幅(PCR)で行い、さらに遺伝子解析にも進めるため異なるPCR産物の大きさ(237-719bp)が作れるような10種類のウイルスプライマーセットを作製した。対象はロタウイルス(A群とC群)、アデノウイルス、ノロウイルス(GIとGII)、サポウイルス、アストロウイルス、ヒトパレコウイルス、アイチウイルス、エンテロウイルスである。現在その臨床的有用性を検討している。 2.ウイルス性下痢症の迅速診断のために幾つかの開発を行った。ノロウイルスGIとGIIを分けて検出するイムノクロマトキットおよびアストロウイルス用のイムノクロマトキットである。RT-PCR法を基準としてノロウイルスは感度(75.4%)、特異度(100%)、一致率(80%)で、アストロウイルスは感度(100%)、特異度(91.2%)、一致率(93.2%)であった。 3.クイで2006-2007年の非細菌性下痢症と思われる患者262人においてmultiplex RT-PCRでウイルスの検査を行った。14.9%が陽性で、A群ロタウイルスが6.1%、ノロウイルスGIが0.8%、ノロウイルスGIIが5.7%、アデノウイルス1.5%、サポウイルス0.8%であった。B,C群ロタウイルスやアストロウイルスは見いだせなかった。小児の方が成人より陽性率が高かった。G1,G3,G9の順でロタウイルスが、GII/4,16,2,3,12の順でノロウイルスが見出された。サポウイルスはGII/3であった。 4.糞便がノロウイルス陽性となった39人の患児のうち、6人の血清からノロウイルスの遺伝子を見出した。糞便中のノロウイルスの量と血液中のウイルス量とは関係が見られなかった。ロタウイルスと同様にノロウイルス胃腸炎でウイルス血症が考えられた。
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