研究概要 |
当初目的は,すべての複合語がレキシコンで語彙的に作られ,その内部構造は統語的に不可視である(Ford et al.1997など)のか,それとも複合語の中には統語構造で作られるものがあり,それらは内部構造が統語的に見える(Shibatani and Kageyama 1988)のかという理論的問題を日本語およびベンガル語のデータで実証的に解決することであった。平成21年度は,日本語の複合語の特質を考慮しながらベンガル語を調査し,次のような2つの暫定的結論を得た。1つは,ベンガル語には2つの自由要素で構成される複合語が存在することが明らかになった。これらの複合語はレキシコンで作られると想定されるにも関わらず,語内部が分割可能である。これはFord et al.(1997)の主張に対する強い反証となる(Bhattacharja.2009. "Bengali compounds : Are they all seamless?' In Omkar N.Koul(ed.)Indo-Aryan Linguistics)。もう1つは,第二要素が一人前の語でも接尾辞でもない複合語がベンガル語に存在することを明らかにした。これは語彙的複合語にも統語的な複合語にも分類することが困難であり,そのため,従来の語彙的複合語と統語的複合語という分類が不十分である(Bhattacharja.in press. "On the origin of affixal polysemy/homonymy in Bengali" in Annual Review of South Asian Languages and Linguistics 2010)。
|