本年度の研究計画では、両部不二・竜神信仰を中心に、醍醐寺と中世の神道灌頂(三輪神道流の麗気灌頂・金亀灌頂・伊勢神道など)や立川流との関係を研究する予定であった。そこで、神奈川県立金沢文庫、国立歴史民俗博物館(田中穣氏旧蔵典籍古文書)所蔵の史料の調査・収集を始めた。 国立歴史民俗博物館では、『醍醐三宝院大事』、『醍醐流大事』、『慶長寛永頃古文書』など、金沢文庫では『請雨経法条々事』(第三二七函第十五号)、『当流嫡々三重相承秘口決』(第一〇二函第一号)など、主に醍醐寺と祈雨法・竜神信仰についての聖教(儀礼関係テキスト・図像)の写真複製を収集した。そして、それらの聖教の整理とその内容の分析に着手した。 聖教内容の分析の成果の一部分は、平成21年5月1日〜5月3日、コロンビア大学主催「陰陽道」シンポジウムで発表する予定である。 十一世紀初めより、神泉苑では真言宗の雨乞儀礼と陰陽道の五竜祭が同時に行なわれ、竜神信仰をめぐる密教僧と陰陽師の交渉は「式法」(式盤の中心に歓喜天やダキニ天などを据えた密教修法)の形成に重要な影響を与えたという論点を発表するつもりである。
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