研究概要 |
まず、第一に、今日、東アジア(日中韓)鉄鋼業は発展、競争、共存の時代に入っている。日本(新日鉄、JFE)に続いて、韓国鉄鋼業(ポスコ、現代製鉄)も2極体制に突入しており、中国鉄鋼業(鞍鋼、宝鋼)も将来的には、2極中心へ向かう可能性が大きいともいえよう。第二に、産業の興亡、技術選択、競争優位等におけるサンクコストは、特定条件下で、非常に重要な役割を果たす。(日米韓中ロの鉄鋼産業の比較分析)。第三に、Kornai(1980)、Dewatripont and Maskin(1995)等の先行研究に基づいて、移行期の国有大型企業のソフト予算制約の問題を理論的、実証的に検証を進めた。第四に、国有企業の組織の変革(U型→M型)を検証し、企業の生産関数を推定、TFPを計測した。第五に、Berliner(1952)、Jin, Qian, and Weingast(1999)の先行業績に基づいて、国有企業レベルとして初のラチェット効果の実証を進めている。次に、公刊済みの論文以外に、(未公刊論文-完成済み)1、「市場経済移行期における中国鉄鋼業の分析:近代過程の幾つかの論争を中心に」2、「鞍鋼における余剰人員の整理と削減-ソフト予算制約の視点から」3、「中国国有企業における在宅休息の現状について-鞍鋼を例として」(出筆中論文)1、「産業の近代化と技術選択-サンクコスト仮説」2、「中国国有企業の人的資源管理の現状-鞍鋼を例として」3、「政府と企業の視点からみた国有企業の配分関係-ラチェット効果の実証を中心に」4、「中国鉄鋼産業の近代化-雁行形態的発展論からの考察」5、「中国国有企業の知的財産権管理の現状-鞍鋼の事例研究」6、「持続的発展へ-中国国有企業の環境管理の現状-鞍鋼の事例研究」7、「東アジア鉄鋼業の発展-日中韓の中核企業の比較を通じて」等が挙げられる。(日本学術振興会の御支援と京都大学経済学研究科のバックアップ、大西広教授の御指導に心より厚く御礼を申し上げたい。)
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