研究概要 |
希ガス元素であるキセノンを含む有機化合物とグラファイト表面との相互作用を理論計算により明らかにすることを目的として研究を進めている。本プロジェクトは昨年12月より開始したので、4ヶ月で上げた研究成果について概要を述べる。まず、キセノン原子とグラファイト表面との相互作用を調べるため、MP2/cc-pVXZ(X=D,T,Q)レベルで吸着過程のポテンシャル曲線を計算し、吸着構造におけるXe-表面距離と結合エネルギーを計算した。グラファイト表面としてはクラスターモデルで近似し、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、のようにベンゼン環を7個まで含む系に対して計算を行った。プログラムはGAMESSを用いた。キセノンとグラファイト表面の相互作用に対しては基底関数重合せ誤差(BSSE)をcounterpoise法で補正し、いくつかの吸着サイトで計算したところ、hollow siteへの吸着がもっとも安定であり、結合エネルギーは142.8meV、距離は3.6Åであることが示された。Xe原子のグラファイト表面への吸着については実験的に吸着距離のみが報告されているが、我々の計算値は実験値とよく一致している。また、グラファイトの炭素原子を除いた欠陥サイトにおける相互作用を評価するために、3つの異なる欠陥サイトへの吸着ポテンシャルを計算したが、結合エネルギーはそれぞれ119.7,120.8,128.8meVとなり、hollow siteの方がより吸着エネルギーが大きいという結果が得られた。これらの結果を踏まえ、今後はXeC_2がグラファイト表面に吸着する過程の計算を行う計画である。
|