研究課題/領域番号 |
08F08348
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
天能 精一郎 神戸大学, システム情報学研究科, 教授
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研究分担者 |
BOKHAN Denis 神戸大学, システム情報学研究科, 外国人特別研究員
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キーワード | 電子相関 / 結合クラスター理論 / 相関因子 / スレーター型ジェミナル / 分光学定数 |
研究概要 |
露に相関した理論の役割は、通常の一電子基底関数に加えて二電子間距離を露に含むジェミナル関数を用いる事により、量子化学計算の相関エネルギーに対する精度を高めると同時に、基底関数系の要求を緩和することにより計算コストを減少させることであり、高精度の電子状態予測に不可欠な重要な研究分野を形成している。特に、近年多くの基礎理論の発展が見られ、最近3年間では関連手法だけで100報近くの論文が発表されている。本課題研究では、高精度のスペクトル定数を求めるために、露に電子相関を考慮した結合クラスター理論の開発を進めており、電子間カスプ条件を用いたCCSD(T)法や開殻系のための理論とソフトウエア開発を行って来た。 本研究課題におけるH22年度の成果を以下に示す。これまで開発を進めて来た、数値積分に基づくCCSD(T)(F12)法を基にして、イオン化状態と陰イオン化状態を正確に記述するためのIP-EOM-CCSD (F12)法、EA-EOM-CCSD (F12)法に加え、励起状態を計算するためのEE-EOM-CCSD (F12)法の定式化と実装を行った。一電子励起演算子にSP仮説のRational Generatorを短縮した二電子励起連結演算子を導入し、励起状態に関するカスプ条件を満たす事により、励起エネルギーの精度を著しく高める事に成功した。以上は、一電子過程に対する計算手法であるが、多電子励起状態を取り扱うには、F12法の多参照理論や高次結合クラスター理論への拡張が必要であり、今後開発を継続する予定である。又、それ以外の応用例としては、CC-F12理論を用いた水分子の非調和振動の解析も行い、Journal of Chemical Physics誌に発表している。
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