PdおよびPd/Au表面における過酸化水素の直接合成過程について周期境界条件を考慮した密度汎関数計算により研究を行った。酸素と水素から直接過酸化水素を得る直接合成は、触媒化学における極めて重要な課題である。九州大学応用化学教室の石原教授のグループと共同でこの問題に取り組んだ。反応解析の結果、まず酸素分子が表面に吸着し、その後原子状に解離した水素が逐次的に酸素分子に付加して過酸化水素が生成する。Pd表面は反応性が高く副反応として酸素分子の解離が優先して起こる。その結果、副生成物の水が生成する。そのために、過酸化水素の生成には効率が悪い。いっぽう、Pd/Au表面では酸素分子の解離は起こりにくく、そのために過酸化水素の生成が高効率で起こることが分かった。これらの結果は反応過程の活性化エネルギーの計算から得られたものである。この他に、ジアリルエテンの開環閉環反応の理論的研究とジアリルエテンの電子輸送現象における軌道の役割の研究を行った。これらの結果は、Journal of Physical Chemistry B、Journal of Physical Chemistry C、Thin Solid Filmsに公表した。
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