本研究では、150℃の低温、かつ大気中ないしは不活性ガス雰囲気中での金属薄膜を介したウェハ接合の可能性を検証し、具体的な例について、プロセス条件の確立することを目的としている。 本年度は、そのためにAu、Cu薄膜を対象としたSiウェハの接合実験、およびそれと比較対照するためにSiの接合実験を行った。接合は、真空中でアルゴンビーム照射による表面活性化を行ったのち、圧接することにより実現した。その結果、Siについては、表面活性化の前の真空度が接合に大きな影響を及ぼすこと、それに対して、Auの場合は、真空度はあまり接合に影響しないことが明らかとなった。また、接合温度については、200℃までの加熱で、Auの場合は顕著な影響があり、温度が高いほど、強度が大きくなるのに対し、Siではほとんど影響が見られなかった。これらの結果は、従来知られていなかったものであり、接合のメカニズムがこれにより明らかになった。すなわち、前者は、真空中に残留する水とSiの反応が影響することにより、親和性が変化するのに対し、Auは水との反応が小さい。また後者は、Siが変形しないのに対し、Auについては塑性変形が接合に大き<影響していることを反映しているものと解釈される。これらの結果は、今後、ウェハスケールの3D集積化プロセスの基盤技術を確立する上で重要な指針を与えるものである。
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