現在行っている研究内容は、公共都市空間の創出と管理において、拡大する民間の役割から生じる複合的な関わりについてである。たとえば、かつて市民生活の重要な役割を果たしていた空間が、短期的な利益を追求する投資家や開発業者の影響下に含まれれば都市のガバナンスや民主主義はどうなるのか。 このように拡大する民間の影響力は、特有の地方政治文化や伝統的な都市開発の方法、機関、利害関係、空間的状況、地域経済、市民社会などによって異なるため、研究では日本国内のある特有の地域性に焦点を当てることにした。1960年代半ばに横浜市で始まった主体的で進歩的な都市のガバナンスをケーススタディーとして掘り下げている。 それに加え、より新しい実例として着目しているのは特定地域における公共空間の民間による創出や管理が争いに繋がるケースである。下北沢の道路開発プロジェクトや銀座松坂屋の再開発プロジェクト、渋谷宮下公園の民間化といったものが挙げられる。 都市化や都市構造の再編が進む中、民間化の拡大は日本に限った問題ではない。都市空間の問題はアメリカ・ニューヨーク、チリ・サンティアゴ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ各都市でも見られるため、それらの都市と日本の都市との関連性も共同研究中である。共同研究結果の議論のため、2009年6月15日、16日にはドイツ、ライプツィヒアーヘン工科大学のKlaus Selle教授とJuliane Pegels博士主催のワークショップに参加した。 また2009年7月4日、5日にはカルチュラルタイフーンという学会で「公共空間の文化」という題材でパネル議長を担当した。複合的観点から見る現代都市日本の公共空間の社会文化研有性について議論した。
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