研究概要 |
植物が病原菌に感染した際には様々な反応が起きる。たとえばシグナル伝達としての生理活性物質の産生、香気成分の合成、活性酸素の産生および抗酸化物質の合成などである。本研究では果実への病原菌の感染とジャスモン酸、エチレンおよび香気成分産生との関連を検討した。処理区としては以下の4区とした。1:無処理、2:傷処理のみ、3:傷処理+C.gloeosporioides,4:ジャスモン酸誘導体処理+傷処理+C.gloeosporioides。C.gloeosporioides感染果実のエチレン産生は、処理後4日に増加したが、PDJ処理果ではエチレン産生が最も低かった。方、傷処理は果実からのエチレン産生に大きな影響を与えなかった。ジャスモン酸濃度はC.gloeosporioides感染果実で、処理後2日に大きく増加したが、PDJ処理はこの増加を抑制した。ウメ果実の香気成分に関して、エステルは最も主要な成分であり、これにアルコール、アルデヒドなどが続いた。C.gloeosporioides感染果実では他区に比較しエステル産生が大きく上昇した。方、PDJ処理はこの増加を抑制し各測定日で最も低い値を示した。傷処理はエステルなど香気成分産生に大きな影響を与えなかった。以上の結果は、ウメ果実で、ジャスモン酸・エチレンおよび香気成分産生がC.gloeosporioides感染により影響を受けることを示唆する。
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