天然多糖の構造活性相関を解析するための「活性」に相当する研究を進めた。まず、当該の外国人特別研究員がこれまでに生物材料の取り扱い経験が全くなかったので、動物細胞の培養技術の習得から始めた。また、この技術習得期間に入手できるβ-グルカンやα-グルカンを調査・検討し、各種多糖試料を購入するとともに、今後大量に材料を必要とするときの設備や試薬などのセットアップを行った。技術習得修了に、β-グルカンやα-グルカンのマクロファージ免疫賦活活性の測定を実施した。すなわち、各種のグルカンを培養マクロファージ細胞であるRAW264.7細胞に作用させ、このときに分泌された一酸化窒素(NO)をNO_2として測定することで多糖の免疫賦活活性の指標とした。また、細胞に大腸菌由来のリポ多糖(LPS)作用させることで炎症を惹起させ、このときにグルカンを作用させることで炎症抑制効果も検討した。NOを産生させるLPSの作用時間や濃度を設定し、設定した実験条件下で、LPSの替わり、あるいはLPSと共存させてグルカンの細胞への処理を行った。その結果、評価試験に用いた4種のβ-グルカンは、それ自体がNOを産生させたりLPSが産生するNOを抑制したりする効果がないことを確認でできた。一方でα-グルカンとして用いた植物デンプン由来の酵素合成グリコーゲンは、LPSが産生するNOを抑制する効果はないものの、それ自体がNOを産生させる結果が得られた。他の4種のα-グルカンはβ-グルカンと同様に効果がなかった。今後は、多糖の種類を増やすとともに、TNF-αやIL-8などのサイトカインの分泌についても法化を行い、その後に、研究計画に従って腸管細胞透過システムを構築し、それを用いて腸管細胞とマクロファージのクロストークをおこす多糖の検索と作用機構解明を目指す。
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