研究概要 |
平成14年の水質基準等の制度の改正により水道水源の安全確保のため農薬に関しては検出農薬の総量による評価・監視が各水道事業体で行われるようになり,優先的に監視すべき農薬のモデルによる評価手法の検討が行われてきた,しかし,これら監視農薬は,気候条件,農薬の物理化学性,土壌条件,農家の使用状況等が複雑に影響し,その予測を行うのは困難を要し,評価手法の精度向上が望まれている.本研究では,水道水源の安全確保および浄水処理の効率化のため,農薬動態予測モデルを用いた手法を検討する.すなわち,対象を筑後川中流域とし,まず既存の稲作用農薬動態予測モデルPCPF-Cと河川水質モデルRIVWQとを用い,筑後川中流域に位置する水道原水取水口での農薬濃度の予測モデルを開発する.その際,福岡県南広域水道企業団の協力を得ながら調査解析を進める. 初年度となる平成20年度は,研究スタートが11月と非常に短かったため,筑後川流域データの収集と平成21年度の田植え時期に予定しているフィールドでの集中観測の準備を綿密に進めた.すなわち,筑後川中流域を対象に,流域地形,土地利用,農薬使用状況,水田管理状況などのデータを収集し,これら細密流域情報(GISデータ)を利用して構築した分布型水収支モデルをベースに,農薬動態予測モデルを組み込むことで農薬の挙動を再現し,流域内における農薬の動態について,その時空間的特徴の抽出を行った.モデルの検証データに関しては福岡県南広域水道企業団で行われた水道原水の農薬監視データを用いた.モデルを利用したシミュレーションの結果,筑後川本川よりも支線河川において高濃度の期間が長期間続く傾向が見られ,平成21年度に予定しているフィールドでの集中観測の対象地点の候補を絞り込むことができた.さらに,シナリオ計算を通して,水田における水管理の工夫により環境中への農薬の流出を大きく減少させることができることが示された.
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