研究概要 |
平成14年の水質基準等の制度の改正により水道水源の安全確保のため農薬に関しては検出農薬の総量による評価・監視が各水道事業体で行われるようになり,優先的に監視すべき農薬のモデルによる評価手法の検討が行われてきた.しかし,これら監視農薬は,気候条件,農薬の物理化学性,土壌条件,農家の使用状況等が複雑に影響し,その予測を行うのは困難を要し,評価手法の精度向上が望まれている.本研究では,水道水源の安全確保および浄水処理の効率化のため,農薬動態予測モデルを用いた手法を検討する.すなわち,対象を筑後川中流域とし,まず既存の稲作用農薬動態予測モデルPCPF-Cと河川水質モデルRIVWQとを用い,筑後川中流域に位置する水道原水取水口での農薬濃度の予測モデルを開発する.その際,福岡県南広域水道企業団の協力を得ながら調査解析を進める. 研究2年目となる平成21年度は,久留米市田主丸町において,15筆で構成される約10haの水田ブロックを対象に,代かき期から約2ヶ月間にわたり,水収支および散布農薬(除草剤)の動態に関する集中観測を実施するとともに,耕作者の水管理実態と使用農薬を把握するため,同ブロックの15名の耕作者へのアンケート調査も併せて実施した.その結果,水田の水管理と農薬動態,特に水田からの流出の関係が明らかになるとともに,耕作者へのアンケートから得られた農薬散布後の止水に対する耕作者の意識と,観測によって把握された水管理実態に差があることが改めて浮き彫りになった. 以上の観測結果を踏まえて,稲作用農薬動態予測モデルや河川水質モデルの改良を行い,さらに流域モデルの構築も進めた.最終年度となる平成22年度においてこれらのモデルの検証を行う予定である.
|