GISやリモートセンシング技術を活用して、ベンガワンソロ流域における土壌侵食の原因の解明と土壌劣化の評価に取り組んだ。これまでの研究の結果、流域全面積の約36%から年間60t/haを超える深刻な土壌侵食を生じていると評価でき、特に急傾斜地での農地開発は土壌劣化を加速させることが明らかとなった。土壌劣化や土地生産性の低下を削減することを目的に、保全地域を特定するとともに、土壌・水保全対策の実施に向けて土地保全マップを作成した。この保全マップは行政機関のみならず、学校においても土壌・水保全に関する教育プログラムとして使用できる仕様とした。 更に、土壌損失の低減を目指した作物残渣マルチング(土壌被覆)法の保全能を評価するために、人工降雨装置を活用してモデル実験を行った。実験の結果、マルチングを施さない試験枠からの土壌流亡量と比較して、30~40%の土壌被覆によって土壌流亡量を38%から53%程度を削減できることが明らかとなった。このマルチング法による保全対策は、現地で容易に手に入る作物残渣を活用して適用できるものであり、ベンガワンソロ流域の現地農家からも受け入れられる技術であると期待が寄せられている。土壌劣化や土地生産性の低下の削減を目的に作成された土地保全マップに基づいて、作物残渣マルチング(土壌被覆)法などの適切な保全技術を普及することで、ベンガワンソロ流域における土壌・水保全に大きく貢献するものと評価できる。 併せて本研究では、リアルタイムで河川水のモニタリングに向けた情報システムの開発にも取り組んだ。このプログラムによって約94%の予測精度で24時間後までの水位予測を可能にすることに成功している。 IJERD国際誌(International Journal of Environmental and Rural Development)に掲載されたこれらの研究成果に対して、優秀論文賞が「環境に配慮した持続可能な農村開発に関する国際会議」で授与されている。
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