本研究計画は、自己免疫寛容の制御および免疫活性の抑制を担う制御性T細胞と骨代謝を担う骨芽細胞および破骨細胞の相互作用について、骨免疫学の観点から明らかにすることを目的とする。本年度は、閉経後骨粗鬆症モデルマウスの作製と、解析に必要な実験系の確立に注力した。閉経後骨粗鬆症モデルマウスの作製には数ヶ月という時間が必要な事、研究分担者が年度後半から参加した事がら、現時点ではモデルマウスを確立し、解析を始めたところである。また並行して、今後、制御性T細胞の抑制機能をin vitroで解析する為に必要な骨構成細胞との共存培養系を確立する為に、効率的な破骨細胞誘導や骨芽細胞の培養法の習得も兼ねて、アポトーシス促進因子であるNoxa遺伝子欠損マウスの骨代謝の解析を行なった。当研究室は、BH3ファミリーのアポトーシス促進因子群のうち、Noxa遺伝子のみが破骨細胞分化に必須のRANKL刺激後に誘導される事を見いだした。この結果は、Noxaが破骨細胞の分化過程において、RANKL刺激後に破骨細胞へと分化しない細胞を除去する運命決定、あるいは成熟破骨細胞の至適な生存期間の決定に関与している可能性を示唆する。In vitro培養系を用いた解析の結果、Noxa遺伝子欠損マウス由来の破骨細胞分化は亢進していることを見いだした。これまで、閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用いて、エストロゲンによるFas-FasLを介したアポトーシスの破綻が骨粗鬆症の原因であり、破骨細胞の生死を制御することが明らかにされたが、本結果は、破骨細胞において、Fas-FasL経路以外にp53を介したアポトーシスによる生存調節が存在する事を示唆する。今後、制御性T細胞による骨破壊の制御機構の解明を進めるのと同時に、Noxaによる新規の破骨細胞分化・機能について解析も進めていく予定である。
|