研究概要 |
P53癌抑制遺伝子(p53)は細胞周期の休止,DNA修復,アポトーシスなどの機能を調節する遺伝子を活性化することができる転写因子である。p53の変異は多くのヒト癌に共通してみられる遺伝子変化であり,癌においてはこれらの機能が失活する。p53は癌化過程自体の抑制においても中心的な役割も果たすため,p53遺伝子の分子機構の解析は癌化のメカニズムの解明に多くの知見を与える。これまでの我々の研究でもdominant negative p53(DN p53)の存在は,口腔癌の早期再発のリスク因子であることを明らかにした(Cancer Lett.,2008)。 本研究ではDN p53機能の鍵となる分子を検討するために,wild p53とDN p53が特異的に相互作用を示す新たな結合蛋白を探索した。2つのイーストハイブリッドシステムを用いてDN p53/wild p53(DNA binding domain to Cterminal domain)によってヒト成人cDNAライブラリーをスクリーニングした。スクリーニングによって,p53依存的に転写制御すると考えられるp53結合蛋白候補タンパクとしてチロシンリン酸化蛋白protein phosphatase of regenerating liver(PRL)を同定した。またPRLとp53を過剰発現したH1299細胞において,PRLは変異型p53(R248Q)と同様にwildp53にも結合できることを免疫沈降法で確認した。PRLは共焦点レーザー顕微鏡にて核に局在して認められた。現在,ヒト口腔癌におけるPRLの役割と予後との関連について免疫組織学的検討とmRNA発現の解析について研究を進めている。
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