植物細胞の体積は酵母や動物細胞と同様に細胞分裂間期に倍加するだけでなく、分裂終了後に大幅に増大する。何が細胞の最終的な大きさを決定するかという問題は基礎、応用研究上非常に重要であるが、そのメカニズムはほとんど分かっていない。核内倍加(endore duplication)は染色体DNAが細胞分裂を経ることなく複製する現象であるが、その結果生ずる倍加した核相(ploidy)と細胞の大きさの間に正の相関が見られることが知られている。本研究ではケミカルジェネティックススクリーニングによって細胞の大きさ、核相を改変する低分子化合物を単離すること、またそれらの標的タンパク質を同定することによって、植物細胞の大きさを決定する分子機構の解明を目指している。今年度はまずスクリーニングに用いる植物を無菌的に生育する方法を開発した後、ケミカルスクリーニングを開始した。これまでに1000個余りの低分子化合物を処理し、形態やサイズ異常を実体顕微鏡で観察、同時にフローサイトメトリによって核相を測定した。これらの一次スクリーニングから、数十個余りの低分子化合物が核相の変化依存的に形態異常を示すことを確認した。現在は新規の低分子化合物を用いた一次スクリーニングを継続しながら、これまでに選抜された低分子化合物について2次スクリーニングを行い、再現性の見られる低分子化合物を特定している。
|