研究概要 |
本研究は、糖鎖の持つ「水溶性」、「保湿性」、また薬品等の「体内吸収力の向上」や「患部への選択的輸送」といった機能に着目、生理活性物質に糖鎖を修飾させて物質が本来有する機能の他に新たな機能を修飾させる基盤研究を展開し、この方針にて、薬効を有するが溶解性や毒性のために新薬とならなかった新薬候補化合物の再度の新薬化検討という、新しい創薬開発戦略の展開研究を目指している。そのための技術課題として、研究代表者が研究を進めているマイクロ波利用の知見を活用した。 前年度までの糖尿病薬プロセス改良合成研究、オキサゾリジンライブラリ調製研究に引き続き、今年度はまず、様々な生理活性を有するオキサジアゾールライブラリの合成研究に着手し、マイクロ波を利用活用して1,3,4-オキサジアゾール構造を有する32種のライブラリ合成に成功した。次に、ジクロフェナックフォーカストライブラリの合成研究をすすめた。ジクロフェナリックは非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の1種であり、処方薬(商品名「ボルタレン」ノバルティス)として市販されている。このジクロフェナリック構造に多様な生理活性を有するオキサゾリジン環を導入し、さらに水溶性向上させるために様々な糖鎖を導入した。当初、糖のヒドロキシル基を無保護で糖鎖導入反応を進めようとしたが、糖部分内のC-C結合の切断副反応を誘発した。そこで糖鎖導入段階ではアノマー位以外のヒドロキシル基をアセチル基で保護し、最終段階で塩基性条件下加水分解反応を行い目的化合物群を得た。そして同様に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)であるジクロフェナック、イブプロフェン、インドメタシンにトリアゾール基を導入した創薬シーズライブラリを調製した。 本研究によって2年間で約200種類の創薬シーズライブラリを調製した。これらの生理活性については、現在、研究中である。
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