初年度の平成20年度においては、当初の計画どおり、冷戦終結後の同盟に関する理論研究の動向を整理し、日米韓関係に適用するための理論的検討の作業とともに、日米同盟に関する日本の政策決定者および世論の認識の変容について、文献および面談によるデータ収集を行った。比較の対象として、韓国における米韓同盟の変容に関する研究についても幅広く資料収集を行うとともに、国際会議などの場を活用して、関連分野の日韓の研究者との意見交換を積極的に行った。研究代表者の李鍾元は、日米韓関係の変容について、研究分担者ソンとの共同研究の一環として、同盟理論一般の妥当性の検討を行いつつ、近年公開された日韓の外交文書に依拠して、日韓正常化過程における日米韓の冷戦認識の実態に関連する論考を発表した。また、冷戦終結後の争点として、北朝鮮問題に関する日韓の安全保障協力について、韓国国家戦略研究所主催の国際会議で報告を行い、論文集に掲載された。 ソンは、同盟に関する意識・価値観の変容を客観的に表す指標の作成に取り組み、"Measuring Norms by'Indexing':Militarization and Demilitarization in Japan and South Korea"を執筆し、現在その要旨を学術誌などに発表すべく、作業を行っている。また、関係者への面談や文献調査に基づいて、日韓における米軍基地問題の政治構造を比較分析した論文"Living with the 'Tragedy of the Commons':A 'New' Actor in US-Japan and US-South Korean Alliance Politics"を執筆し、公刊に向けて準備中である。この二つの論文を土台に、2年目の平成21年度には研究成果を単行本として出版することをめざしている。
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