赤痢菌をはじめとするグラム陰性病原細菌の多くはIII型分泌装置を持ち、これを通じて種々のエフェクターを宿主細胞へ分泌して感染を成立する。赤痢菌の場合には、III型分泌装置より50種類以上のエフェクターを分泌することが推定されているが、腸上皮細胞へ侵入後に菌が分泌するエフェクターの役割は未だ多くが不明である。そこで、本研究では細胞内の赤痢菌から宿主細胞内へ分泌されるエフェクターOspHについて、その感染に果たす役割を明らかにすることを目的とした。20年度は、ospH遺伝子欠損株およびOspH過剰発現赤痢菌を作製し、当該菌株の培養細胞への感染による影響を精査した。具体的には感染細胞内でのOspH局在解析のために、Mycタグを付与したOspHを過剰発現する赤痢菌を培養細胞に感染させ、抗Myc抗体を用いた免疫染色を行った結果、菌体から分泌されたOspHは上皮細胞の細胞質内に均一に分布し特定のオルガネラへの局在は認められなかった。ospH遺伝子欠損株の表現型に関しては現在解析中である。さらに、OspHの機能を明らかにするためにGFPまたはMycタグを付与したOspH発現ベクターを作成しGFP-OspH、Myc-OspHを培養細胞に発現させる系を構築した。現在、これらのタンパク質の細胞内局在、および宿主細胞に与える影響を解析中である。さらに、OspHの標的宿主因子の同定をおこなうためにGST-OspHを用いたGSTプルダウンアッセイおよびイーストツーハイブリット法による解析を行っている。
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