本研究では、最近導入された超多チャンネルの受信系で高性能な電波干渉計が構成できる大型大気レーダー「MUレーダー」に、超高感度のICCDカメラを組み合わせて、電波および光学の高感度・高精度同時観測で、流星物質の大気との相互作用、とくに電離発光時のフラグメンテーションの物理を定量的に明らかにすることを目的としている。本年度は下記のように予想以上に順調に計画が進展した。 1)光学観測機器の整備MUレーダーと高感度ICCDカメラの同時観測を、前年度に進めたが、これまでのデータ初期解析で複雑なレーダー断面積の高度(時間)変化が見られた。この現象を解明するために、大口径対物レンズによる光学系をICCDに適用したほか、ICCDカメラの分光化を行なう検討を行った。 2)観測キャンペーン前年度に試験観測を行なったデータを詳細解析して観測モードを最適化した。またMUレーダーのキャンペーン観測の割り当てを獲得して、毎月24時間のヘッドエコーモード観測を実現し、晴天時にはICCDカメラとの同時観測を行って多数の同時観測データを取得することに成功した。 3)同時観測データの解析前年度から開発をすすめている25ch用の干渉計ヘッドエコー解析ソフトウェアシステムについて、パルス間の位相の情報を利用した新しい高精度での解析法を開発した。これにより観測精度が40-50倍向上した。この方法では速度の詳細な変動(加速度)の解析やフラグメンテーションの詳細の解析が可能になった。その結果、これまで組成分離蒸発が起こっていると言われた信号強度変化もフラグメンテーションで説明できることや、見かけの加速がフラグメンテーションでできることの実例を発見した。これらは同分野の知見を塗り替える発見である。現在、大量のデータの解析を効率よく進めている。
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