本研究では、北半球中緯度で最も高性能な流星レーダーとして稼動できる京都大学の大気観測用大型レーダーであるMUレーダーを用いて、種々の散在流星ソースの流星フラックスの変化を明らかにするとともに高緯度のEISCATその他のレーダーの結果と合わせてグローバルな流星数の季節変化分布を明らかにすることを目的としている。本年度は下記のように極めて順調に研究が進展した。 1)MUレーダー観測昨年取得した複数の観測モードのデータを詳細解析し多くの流星の軌道を正確に決定するために最適な観測モードを定めた。このモードでMUレーダーの長時間観測を申請し、21年度中に8月を除く全月について24時間以上の観測を実施することができた。各24時間で、位相時間変化を駆使した未曾有の高精度解析により、3000個以上の微小流星の軌道(速度、輻射点方向、さらに大気減速の時間変化)を正確に求めることに成功した。やや精度が悪くなる流星も含めるとさらに数千個以上流星数は増加した。これらのデータは散在流星の季節変化や日変化だけでなく、大型レーダーではこれまであまり観測されてこなかった群流星:しし群、みずかめδ群、オリオン群、ふたご群なども捉える貴重なデータベースとなっていることを示した。今後解析を進めて北半球の流星フラックス分布の詳細を明らかにすると、数年後には南極でのPANSY(南極昭和基地大型大気)レーダーと組み合わせて全天マップを完成することが期待される。 2)多点観測の充実MUレーダーの外部受信点での観測、および光学観測の多点観測を行なった結果を受けて、本年度はとくに高感度光学観測の多点観測について、日本流星研究会の協力で進展させ、毎月のキャンペーン観測時の晴天時には、多数の光学およびレーダー同時観測データを蓄積し、その軌道を比較してレーダーの精度やオフセットを検証した。
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