研究概要 |
本研究では、シラノンの性質の解明を目的としてシラノン遷移金属錯体に着目し、ヒドロキシシランカルコゲノールTbt(Mes)Si(OH)EH{Tbt=(2,4,6-{CH(SiMe_3)_2}_3C_6H_2)}1(E=S,Se)を活用することで、ケイ素、酸素、遷移金属、カルコゲン元素から成る四員環メタラサイクルを合成・単離し、その脱カルコゲン化反応による標的化合物の合成を目標としている。本年度は、シラノン-白金錯体の合成を目指し、(1)その良い前駆体と考えられる、ケイ素、酸素、白金、カルコゲン元素からなる環状錯体の合成とその性質の解明、(2)3価リン試剤との反応による標的化合物の合成検討、を行った。まず、[Tbt(Mes)Si(μ-O)(μ-E)Pt(PPh_3)_2]2(E=S,Se)に対して、過剰量の各種3価リン試剤(R_3P)との熱反応を検討した結果、トリフェニルホスフィンを用いた場合には新たな生成物は全く確認されず、HMPT(R=Me_2N)などのリン試剤を用いた場合には配位子交換反応が進行するのみであり、目的とする脱カルコゲン化反応は全く進行しなかった。次に、キレート効果により配位子交換反応を抑制することを目的に、[Tbt(Mes)Si(μ-O)(μ-E)Pt(dppe)]{dppe=1,2-bis(diphenylphosphino)ethane}3a(E=S)および3b(E=Se)を合成・単離し、その構造的特長を明らかにした後、3と過剰量の各種三価リン試剤との熱反応では末反応であったが、2を用いた場合とは異なり、配位子交換反応は全く観測されなかった。次に光照射条件下(高圧水銀灯)で、3bと10当量のHMPTとの反応をNMRで反応を追跡したところ、^<31>P{^1H}NMRにおいて、トリスジメチルアミノホスフィンセレニド(Me_2N)_3P=Seの生成を確認した。基質ならびに反応条件の最適化について検討中である。
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