今年度は、雌が2型を示すアオモンイトトンボを用い、雌の適応度と2型比の動態の観点から負の頻度依存選択の実証的な研究を行なうとともに、2型間の繁殖形質の違い点から多型比の地理的変異の成立機構を明らかにし、遺伝的多型の総合的理解に成功した。 雌の2型の比率が異なる様々な野外個体群において各型の雌の繁殖成功度を調べたところ、各型の適応度は、自身の型の比率に対して負の相関を示し、常に少数派の適応度が多数派よりも高くなっていたことがわかった。個体群内の2型の比率は、約50%を中心に2世代周期で変動していた。これらの結果は、本種の雌の色彩2型が、負の頻度依存選択を介して維持されていることを示している。全国規模の調査を行なったところ、低緯度ではメス型のほうが蔵卵数(=潜在適応度)が多きく、高緯度ではその逆になっていた。高緯度ほどオス型の割合が増加することから、潜在繁殖慮の違いが2型比の緯度勾配が生じさせていることが示唆された。
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