PD-1/PD-L1経路を利用して広範な免疫抑制を伴わない特異的な移植片対宿主病(GVHD)予防を達成したい。mouse Langerin promotor下にPD-L1遺伝子を導入し皮膚ランゲルハンス細胞に特異的にPD-L1を高発現させることを目指していたが、前年度の研究でLangerin陽性の樹状細胞は多臓器(リンパ節、脾臓、肺、肝臓など)に存在することがわかった。逆にPD-L1をもともと高発現する細胞を使用してGVHD予防法を開発することを考えた。マウスの同種骨髄移植の移植前処置(全身放射線照射)から48時間後の脾臓においては残存細胞のうち約半数がマクロファージとなっており、それらはPD-L1を高発現していた。さらに4日後には脾臓の血液細胞のうち90%以上がマクロファージとなりPD-L1を高発現していた。これらの放射線耐性マクロファージ上のPD-L1は、ドナーT細胞の過剰な活性化を抑制しているものと考えられる。これらのマクロファージをソートして混合リンパ球培養を行うと著明にT細胞の活性化を抑制した。マウスの同種骨髄移植モデルにて移植直後のマクロファージをLiposomal Clodronateを使用して除去したところGVHDは有意に増悪した。またマクロファージの重要な増殖因子であるM-CSFをブロックするとやはりマクロファージが減少しGVHDは有意に増悪した。これらのマクロファージ除去レシピエントの体内ではドナーT細胞がコントロールのレシピエントに比べ著明に増加していた。
|