研究課題
出生直後の発達期における母親からの隔離によるストレスが、成長後の様々な行動に影響を与えることが知られているが、先行研究では不安・情動行動への影響が主に研究され、社会行動への影響についてはほとんど知られていない。そこで、本研究課題では新生仔期におけるストレス負荷が、後の社会行動発達に及ぼす影響とその基盤としての脳神経メカニズムについて多角的に分析することを目的とした。エストロゲン受容体(ER)βはストレス関連ホルモンを産生する脳部位に高濃度で分布し、その分泌調節に関与することが知られているが、新生仔期でのストレス反応の制御に果たす役割についてはよく知られていない。そこで、新生仔期におけるストレス反応とERβとの関係に着目し、解析を進めた。第1実験では、新生仔期に母子分離経験があるC57BL/6J雄マウスとERβ遺伝子欠損雄マウスを用いて、思春期及び成体期での攻撃行動の測定を行った。その結果、母子分離経験はC57BL/6J雄マウスの思春期における攻撃行動の発現を抑制し、その影響はその後も永続的に続くことが見いだされた。また、先行研究において思春期での攻撃行動の開始時期が通常より早まっていることが知られているERβ遺伝子欠損雄マウスでも、母子分離経験により攻撃行動開始時期に遅れが生じることが観察された。しかし、ERβ遺伝子欠損雄マウスでは、C57BL/6J雄マウスとは違って、母子分離ストレスによる攻撃行動発現の抑制効果は思春期以降には見られないことがわかった。第2実験では、同じく母子分離経験があるC57BL/6J雌マウスを用いて、成体期での社会的不安行動を解析した。その結果、母子分離経験は成長後C57BL/6雌マウスでは不安行動が増し社会行動に影響があったことがわかった。
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Endocrinology 150
ページ: 1061-1068