今年度は年次計画に示したように「長期モニタリング」に関する研究を実施した。水田大型ライシメーターでの溶存温室効果ガスのモニタリングでは、特に溶存メタンの生成・消失・移動に焦点を当てて、実験を行った。畑作モノリスライシメーターを用いた実験については、今年度はその準備と予備実験を行い、2009年5月から実施する本実験に向けた基礎データの取得に専念した。そして、モデル化についても、その初段階として、土壌プロファイル中でのガスの生成・消失・移動に関するプロセスを大まかに抽出し、概念図の作成およびその定式化に取り組んだ。 水田ライシメークーにおける実験前作の異なる3つの処理区(水稲連作、大豆小麦転換田、陸稲転換田)において、溶存ガス排出量の比較実験を行うとともに、溶脱する炭素の形態の特定(DOC、有機酸、固体NMR)や、溶存ガスと水質酸化還元指標(ORP、DOなど)との関係の解析を行った。炭素の形態については、現在分析中であるが、特にメタンが生成される部位・深度を特定するための成果が得られると期待している。 畑作モノリスライシメーターにおける実験浅層地下水面付近の土壌下層における、脱窒による亜酸化窒素の生成とその溶存排出量には、ばらつきが大きく、そのことが現象の解明および定量評価に不確実性をもたらしている。そこで、このモノリス実験に際しては、採取土壌間(1本1本のモノリス土壌カラム間)の物理的、化学的、生物的特性を明確にしておくことが重要であると考え、予備実験・測定に多くの時間を割いた。また、地下水面の設定をはじめとした、実験条件の設定および測定装置の準備についても、慎重に検討を繰り返し、最適な実験条件の設定の完了にこぎ着けた段階である。
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