研究概要 |
有用な半導体材料であるCdカルコゲニドナノ粒子の新しい構造制御法の開発を行った。3.4nmのCdSナノ粒子が塩化物イオンと界面活性剤の添加および加熱によってOstwaldライプニングが促進され、17nm(短軸)×30nm(長軸)の六角柱型ナノ粒子(ナノペンシル)へ構造が劇的に変態した。ナノペンシルは均一なサイズと構造を有し、基板に直立し、広範囲にわたって二次元および三次元超格子を形成した。この劇的な構造変態は、塩化物イオンと界面活性剤による粒子の溶解度の増大が原因であり、溶解度を制御する因子(反応温度、Cl/Cdモル比)を変えることで得られる粒子サイズが制御できた。この構造変態手法は、CdSeやCdTeナノ粒子にも応用でき、汎用性が高い。ナノペンシルにAuまたはPtを成長させたところ、界面エネルギーの大きいエッジ部に選択的に貴金属相が成長した。CdS-貴金属ヘテロ接合では、CdS相の光励起電子が貴金属相に移動することによってキャリアが空間的に分離し、励起子の長寿命化による高効率可視光応答性光触媒に応用できる。CdS-Auナノ粒子の場合、ナノペンシルのサイズと構造の均一性を保っており、ナノペンシル同様の二次元または三次元の超格子を形成するため、異方性相分離構造ナノ粒子の指向的配列制御のための理想的な系である。また、CdSナノ粒子の、水からの水素生成光触媒能に対するサイズ依存性に関して検討を行った。TiO_2に担持した1.6, 2.9, 3.4, 4.1, 12.5nmのCdSナノ粒子(Pt担持)の可視光(>400nm)照射による水素生成活性を調査したところ、3.4nmの粒子で最も活性が高かった。これは、吸収波長と表面積のバランスが取れたサイズで活性が高いことを示したもので、高効率可視光応答性光触媒へ向けた半導体-貴金属ヘテロ構造ナノ粒子の構造設計の指針になるものである。
|