ペロブスカイト型酸化物を用いた酸化物デバイスは、従来の半導体デバイスでは得られなかった特有の新規機能が発現する。そのような酸化物デバイス開発において、ショットキー障壁高さの制御は非常に意義深い。そこで本研究では、ショットキー障壁高さ変調を引き起こす界面ダイポール起源解明を目的として、「電荷不連続」と「格子不整合」の制御を行ったLa_<1-x>Sr_xMnO_3/Nb doped SrTiO_3(LSMO/Nb:STO)ヘテロ接合について、その場放射光光電子分光測定による研究を行った。 1.終端面制御による電荷小連続順序の制御 LSMO(x=0.4)/TiO_2終端化Nb:STOヘテロ接合では、界面ダイポールによるショットキー障壁高さの増大が見られたのに対し、SrOを一層挿入することにより極性を反転させたLSMO(x=0.4)/SrO終端化Nb:STOヘテロ接合では、ショットキー障壁高さが低下することを明らかにした。 2.La:Sr組成比制御による電荷不連続および格子不整合の大きさの制御 界面ダイポールは電荷不連続と格子不整合を共に有する組成において形成され、特にLSMO(x=0.4)において極大値を取ることを明らかにした。一方、格子不整合が非常に小さいLSMO(x=0.1)、および電荷不連続を持たないLSMO(x=1.0)(SrMnO_3)においては界面ダイポールが形成されないことを見出した。 以上の結果より、界面ダイポールは、「電荷不連続」と「格子不整合」が協奏的に寄与することにより形成されたものと結論づけられる。つまり、従来は考慮されていなかった界面構造が、接合特性に重要な役割を果たしていることを実験的に示したものである。本研究より得られた知見は、酸化物ヘテロ接合デバイス開発において、界面構造制御により望みのショットキー障壁高さを得られる、といった非常に重要な設計指針を与えるものである。
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