研究概要 |
採用初年度(当該年度)は、申請者が2007年に発表(Nochi.T.,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,104:10984-10991,2007)したコメ型コレラワクチン(MucoRice^<TM>-CTB)をヒトで実用化すべく、霊長類(カニクイザル)を用いた評価を医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターとの共同研究で実施した。その結果、マウスでの成果と同様に、MucoRice^<TM>-CTBをカニクイザルに経口投与することで、高いレベルの抗原特異的免疫応答を全身組織に誘導可能であった。一方で、霊長類はSPF環境下で飼育されている実験用のマウスとは異なり、解析に使用した22頭全てのカニクイザルの腸管において、コレラ毒素およびその類毒素である大腸菌毒素に対する免疫応答がすでに誘導されていることが明らかとなり、霊長類はマウスとは異なる腸管免疫システムを発達させていることが明らかとなった。本研究結果は、現在、Proc.Natl.Acad.Sci.USAに投稿中であり、今後ヒト腸管組織におけるコレラ菌や病原性大腸菌に対する免疫システムを詳細に解析することで、MucoRice^<TM>-CTBを実用化する際の基盤データを取得していく予定である。一方で、上述した通り、申請者はMucoRice^<TM>-CTBの経口投与によるコレラ毒素に対する中和免疫誘導効果(下痢抑制効果)を報告してきたが、コレラ菌や毒素病原性大腸菌を実際に経口感染させた際の予防効果については、これまで未知数であった。申請者らは、大阪大学微生物病研究所の本田武史教授らのグループと共同で、腸管ループ法を用いてその感染阻止効果を詳細に解析した結果、MucoRice^<TM>-CTBを事前に経口投与することで、コレラ菌や毒素病原性大腸菌が感染後に誘発する下痢症状を完全に防御可能であることを実証することに成功した。本研究成果は、Lancetに投稿すべく、現在準備を進めている。以上の通り、平成20年度に申請者が実施した研究は、MucoRice^<TM>-CTBのヒトでの実用化に向けた非常に重要な研究であり、本研究2年目にあたる平成21年度は、当初の計画通り、MucoRiceTMの汎用性の実証に向けた研究を継続する予定である。
|