研究課題
本年度は、申請者が開発したコメ型コレラワクチン(T.Nochi, et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 104:10984-10991,2007)のヒトでの実用化を目指し、医薬基盤研究所霊長類医科学研究センターとの共同研究で、カニクイザルを用いた試験を実施した。その結果、コメ型コレラワクチンをカニクイザルに経口投与することで、中和能を有したコレラ毒素(CT)特異的な全身系での免疫応答(CT-specific serum lgG)を誘導することに成功した(J.Immunol.,183:6538-6544,2009)。また、本ワクチンの経口投与により、最終免疫後6カ月間は、中和能を持続可能であること、また6カ月後の追加経口免疫により、さらなる免疫増強効果が期待できることが明らかになった。一方で、興味深いことに、解析したカニクイザル(26頭)全個体において、中和能を存したCTに交叉反応する粘膜免疫応答(CT-reacitive mucosal lgA)が免疫以前から認められ、本コメ型コレラワクチンを経口投与しても、そのレベルは変動しなかった。本実験で使用したカニクイザルは、コレラ菌の感染履歴がないことから、コレラ毒素に類似した、易熱性大腸菌毒素を産生する病原性大腸菌等による、霊長類特有の自然感染が疑われた。以上の背景を踏まえ、コメ型ワクチンの実用化に向けた研究を加速するためにも、申請者は昨年7月よりヒト化マウス研究の権威であるノースカロライナ大学チャペルヒル校のJ.Victor Garcia-Martinez博士の研究室で、トランスレーショナルリサーチを開始している。Garcia研究室で開発に成功したヒト化マウスは、免疫不全マウスにヒト胎児由来の胸腺組織を移植した後、CD34陽性の造血幹細胞を移植して作製する。そのため、ヒトのMHCに拘束性を有したT細胞を分化成熟させることが可能であることから、特にワクチン開発を進める上で、とても重要な研究ツールとして昨今非常に注目されている。現在申請者は、特にヒト化マウスの腸管免疫に焦点を当て、経口ワクチン開発の観点から分子細胞生物学的解析を展開している。
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/EnMen/index_e.html