研究課題
研究最終年度に当たる今年度は、申請課題であるコメ型ワクチンを完成させるべく、トランスレーショナルリサーチを組み合わせた研究を実施した。具体的には、コメ型ワクチンのヒトでの免疫原性を評価すべく、日本学術振興会特別研究員の規定の下、ヒト化マウス研究の権威である、米国ノースカロライナ大学のJ.Victor Garcia-Martinez博士の研究室に研究留学し、ヒト化マウスの腸管組織におけるヒトの粘膜免疫学の発達に関する評価を行った。その結果、これまで多数報告されているヒト化マウスの中で、Garcia研究室で作成するヒト化マウス(BLTマウス)は、腸管免疫システムが最も発達しているモデル動物であること、そして粘膜免疫システムで最も重要であるIgA産生が、このBLTマウスのみに高頻度で認められることを明らかにし、粘膜ワクチン研究に最も適したモデル動物であることを明らかにすることに成功した(論文準備中)。一方で、2007年度に申請者が開発し報告したコメ型コレラワクチンが、コレラ毒素に対する防御免疫誘導能に加えて、コレラ菌や病原性大腸菌(生菌)に対する防御免疫も誘導可能であることも、実証することに成功した(PNAS,107:8794-8789,2010)。その他、今年度は、安全性に優れた経鼻ワクチン開発にも力を注ぎ、ナノメートルサイズの粒子(ナノゲル)をワクチンデリバリーとして応用したナノゲル型経鼻ワクチンの開発にも成功し、論文として発表した(Nature Materials、9:572-578,2010)。以上の通り、今年度は、計5報の原著論文を発表し、また本研究期間である平成20-22年の3年間を通して、計18報の論文を発表することができた。3年間の本研究により、粘膜ワクチンを実用化するための、研究基盤を構築することができたと考える。
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Nature Materials
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http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/EnMen/index_e.html