研究概要 |
1、空間反転対称性のない重い電子系超伝導体CeRhSi3,CeIrSi3において実験で観測されている縦磁場Hc2の特異な振る舞いについて理論的解析を行った。この物質の超伝導は反強磁性の量子臨界点に非常に近いところで起こっているという実験的事実を理論に取り入れることによって、実験でみられるHc2の振る舞いは、空間反転対称性の欠如と強いスピン揺らぎの合わさった結果として出現することを指摘した。この結果は量子臨界点近傍のある種の超伝導体に対して一般的に成り立つと考えることができ、量子臨界点近傍の超伝導の理解を深めるものである。2、SrRu204の(001)界面の超伝導状態について理論的に研究を行った。界面においては空間反転対称比が欠如しており、そこにおける超伝導は、バルクの超伝導状態では破れていた時間反転対称性が回復した、ジンクレッド・トリップレッドの混合状態が安定化することを指摘した。また、空間反転対称性の破れの具合がそれほど大きくない場合には、この超伝導はトポロジカルに安定な状態であることを示した。この結果は、近年注目を集めているトポロジカル秩序の具体的な例を理論的に提示したものであり、トポロジカル超伝導の観測に向けた一助となることが期待される。
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