研究概要 |
非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)は、近年の疫学研究から消化器癌の発生リスクを大きく減少させる事が明らかになり、NSAIDsは新しいタイプの抗癌剤としても注目されている。NSAIDsの抗癌作用において、NSAIDsによるアポトーシス誘導が主要な役割を果たしている。最近我々はNSAIDsによるアポトーシス誘導が小胞体ストレス応答(CHOPの誘導)を介している事を見出した(Tsutsumi et al.,Cell Death Differ.2004)。このアポトーシスを抑制するタンパク質は、NSAIDsの抗癌作用に対してネガティブに働く可能性がある。そこで、このような因子をDNA maicroarray法で検索した結果、我々はS100Pを見出した。S100PがNSAIDsにより誘導されること、及びその誘導が小胞体ストレス応答を介していることを世界で初めて発見した。また、NSAIDsにより誘導されたS100PはNSAIDsによるアポトーシスを抑制(CHOPの発現抑制)するだけでなく、その他の抗癌作用(浸潤抑制、増殖抑制)も抑制することで細胞をNSAIDsに対して耐性化していることを見出した。我々はこれまでに小胞体ストレス応答が癌の運動性を亢進することを示唆していていたが、その重要な因子として今回新たにS100Pを同定した。S100Pを阻害するクロモジンをNSAIDsと同時に処理することで、NSAIDsの抗癌作用を増強できることも発見した(Namba et al.,J Biol Chem.2009)。
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