研究概要 |
1.概日時計の出力信号として機能するアリルアルキルアミンN-アセチル転移酵素(NAT)の活性阻害作用スペクトルを解析した結果,光周性の光感受性と類似し,青色光が有効であることが明らかになった.NATはメラトニン合成酵素である.すなわち,メラトニン系を介して概日時計から光周時計に光情報を出力している可能性が示唆された. 2.UV-Bは,メラトニン合成を促進することが明らかになった.哺乳類では,メラトニンはUV-Bが生成する活性酸素のスカベンジャーとして働く.したがって,ナミハダニのメラトニン系には,可視光だけでなくUV-B情報も伝達され,それぞれの情報に応じて,メラトニンが異なる働きをする可能性が示唆された. 3.UV-Bは,非休眠成虫の致死および忌避を促進し,産卵を抑制することが明らかになった.夏期,ナミハダニが葉裏に生息している理由は,葉をUV-Bカットフィルタとして利用し,致死的なダメージを避けるためであると考えられる.一方,休眠成虫は,UV-Bに対して強い忌避反応を示したが,致死は促進されなかった.休眠成虫の体色はオレンジであり,これは抗酸化作用をもつβ-じカロテンの蓄積によるものである.したがって,休眠成虫は,葉がない冬期,UV-Bのダメージを軽減するために,負の走光性およびβ-カロテンの蓄積機構を発達させたのかも知れない. 4.マデレゴキブリの後腸を用いた薬理学的アッセイによって,ナミハダニ特異的殺ダニ剤ビフェナゼートに神経抑制作用があることが明らかになった.また,GABA受容体のアンタゴニストのビククリンメチオダイドを処理したところ,ビフェナゼートの作用が抑制された.これは,ビフェナゼートの作用点がGABA受容体にあることを示唆する.
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