研究概要 |
本研究の主目的は,戦後のアメリカ経済学に与えたオーストリー経済学の影響を,その経済学方法論とそれを基礎とした経済思想の観点から明らかにし,それをもとに新しい自由な社会像を構想することにある。これを実行するため,本年度は本研究テーマに関わる人物の貴重文書が収められているスタンフォード大学フーバー研究所にて2009年4月より在外研究を行い,以下の二つの考察を行った。1)ハイエクのアメリカにおける受容に関する考察。このため,1940年代英国で活躍していたハイエクが,その後アメリカに渡った際の,ハイエク側の事情と,当時喝采を持って受け入れたとされるアメリカの思想状況を明らかにする必要がある。これにより,20世紀アメリカ経済学においてオーストリー的源泉を持つ経済学方法論・経済思想がなした貢献を明らかにする。このための資料を現地にて収集し,現在著作としてまとめる準備をしている。2)ハイエクと同世代の学者たちとの交流の解明。ハイエクがアメリカで活躍していた当時やその後,他のオーストリー経済学の学者たちはどのようにかれと連携をとっていたのか。これにより,かれを含めたオーストリー経済学がどのように活躍し,普及していったのかを明らかにできる。その端緒として同時期にかれと同じく進化論的主張を展開した今西錦司とハイエクとの交流を,現地で収集した資料から明らかにし,それをもとに論文として完成させた。これは来年度以降『進化経済学の諸相(仮題)』(江頭・服部編,日本経済評論社)として公表される予定である。
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