研究概要 |
本計画における最終年度にあたる本年度は,スタンフォード大学フーバー研究所にて現地調査を中心とした在外研究を行い,当該文庫に納められている人物の貴重文書を発見した。この結果,次のような成果が得られた。1)ハイエク思想のアメリカにおける受容が,1940年代にかれの盟友F.マハループがなした功績がわかる調査を発見し,これを論文作成に活用した。これにより,20世紀アメリカ経済学においてオーストリー的源泉を持つ経済学方法論・経済思想がなした貢献を解明する予備的考察とすることができた。ここでの成果は,2011年11月開催予定の経済学史学会にて「ハイエク『隷属への道』再考-マハループの貢献とアメリカへの影響」として報告し,日本語で論文公開を目指すとともに,英語版を作成し,英語圏の学術雑誌に投稿を予定している。次に,2)ハイエクと同世代の学者たちとの交流を調査し,かれの思想が与えた影響を解明した。その一環として,同時期にかれと同じく進化論的主張を展開した今西錦司とハイエクとの対談を検討し,周辺事情を現地で収集した資料からより明らかにした。この成果は「ダーウィニズムをめぐる論争?-ハイエク・今西対談再考」として『進化経済学の諸潮流』(八木・江頭・服部編,日本経済評論社)に収録された。またこの論文の英語版を,2010年6月にアメリカ・ニューヨーク州シラキュース大学で行われたHistory of Economic Society(アメリカ経済思想史学会)で報告した。本稿は,さらに修正を加え, Yusuke YOSHINO "Evolution, Hayek and Kinji Imanishi" in Hayekian Tradition, VOLUME SIX : THEMATIC ANALYSES, Edited by Robert Leeson, Palgrave Macmillan, 2011.に収録されることが決定した。
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