研究課題
我々の銀河の中心領域からは広がったX線放射が存在している。そのX線放射の特徴はエネルギー6.4keV、6.7keV、6.9keVの3本の鉄輝線である。6.7keV、6.9keVの輝線は我々の研究によって広がった高温のプラズマからのものであることが分かってきたが、6.4keVの正体や起源については未だ謎が多く残っている。そこで、私はこのような広がった放射に対する高感度とスペクトル分光力に優れる「すざく衛星」を用いた研究を行った。その結果、これまでに発見されている鉄とニッケルからの輝線に加えて、それよりも原子番号の小さなアルゴン、カルシウム、クロム、マンガンからの輝線を初めて発見することに成功した。その起源として、外部X線による光電離説と宇宙線電子による内核電離説が考えられている。私はその両者で生成されるX線スペクトルの中で大きな違いが、連続成分の光子指数と輝線の等価幅であることを見出し、観測結果と比較を行った。その結果、X線起源であるとすると、外部X線の光子指数はおよそ1.9であり、分子雲の重元素組成量は太陽のものに比べて約1.6倍と求められる。電子起源であるとすると、10-100keVのエネルギー帯の電子のスペクトル指数はおよそ3であり、分子雲の重元素は太陽に比べて約4倍となる。一方で、銀河中心に広がっているプラズマから求められる重元素組成量は2倍程度であり、同一環境下に存在しているプラズマと分子雲が同程度であると考えられるので、中性輝線の起源は外部X線によくる光電離であることが有力となった。本研究成果の重要な点は、鉄だけでなく多種元素によって強い制限が加えられたことである。
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Publications of the Astronomical Society of Japan 62, No.2
Publications of the Astronomical Society of Japan 61, No.4
ページ: 687-695
ページ: 751-761