2009年1月に出版された論文(Shogo Nishiyama et al.「Magnetic Field Configuration at the Galactic Center Investigated by Wide Field Near-Infrared Polarimetry」The Astrophysical Journal 2009年1月690巻2号1648ページ)で、この研究の主目的である銀河系中心領域の磁場構造を、近赤外線偏光観測で調べることが可能であることを示した。研究手法の確立を受けて、より広いデータを取得し、解析することが本年の主な計画であった。2009年5月と8月に計2ヶ月程度、南ア・フリカ共和国に滞在し、観測を行った。データは順調に蓄積され、当初の計画の約80%の領域の観測が終了した。 これまで取得してきたデータの中から、銀河系中心領域の2度×2度の範囲のデータ解析が終了した。観測範囲は2009年1月の論文で用いたものの36倍にもなる。より広範囲での磁場構造が明らかになってきた。銀河面に垂直なポロイダル磁場がほとんどの空間を占めており、分子雲の内部だけが銀河面に平行なトロイダル磁場になっている、というのがこれまでの認識であった。近赤外線偏光観測を使えば、より広い範囲を、同じ方法で磁場構造を調べることが可能である。解析を進めてきた中で、本研究では大局的な磁場構造が空間的に変化していることを発見した。銀河面に近い領域はトロイダル磁場が支配的であり、銀河面から離れるにつれて、ポロイダル磁場に変化している。
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