研究課題
枯草菌の持つイノシトール分解系を改変・応用することで、バイコンバージョンにより安価なミオ-イノシトール(MI)を糖尿病の症状改善効果があるD-キロ-イノシトール(DCI)に変換できる。昨年度までに、このDCIバイオコンバージョンにおいて、培地にリン酸塩を添加することで生産量が約1.3倍に向上することを見出した。また、昨年度に枯草菌の既知のMI輸送担体IolTとIolFにおいて、IolTがMIのみならずDCIを含む包括的なイノシトール輸送担体であり、IolFはMIよりもむしろDCIとの親和性が高い輸送担体であることを示唆する知見を得ていた。本年度はその知見の傍証を得ることが出来、学術論文として報告した。さらに、アルツハイマー病に効果があるシロ-イノシトール(SI)を枯草菌が唯一の炭素源として利用可能であったことに注目し、昨年度は枯草菌が2種のSI脱水素酵素IolX(YisS)IolW(YvaA)を持つことを同定した。本年度はこれらの酵素の性質を精査し、SI脱水素酵素遺伝子を特定した初めての例として学術論文として報告した。このうち、iolXを破壊することで枯草菌のSI資化能が著しく低下したため次IolXは細胞内でのSI分解に必要であることが示唆された。この知見を応用し,iolXの破壊を含むイノシトール分解系の代謝改変により、効率よくMIを選択的にSIへと変換できる菌株を得ることが出来次SIのバイオコンバージョン生産系確立への糸口を得た。これはバシラス属細菌の代謝改変による生理活性物質生産系の新規構築という本研究の目的の達成を示す成果である。加えて、iolXの転写制御が、イノシトール分解に関わる遺伝をコードしているiolオペロンとは異なるリプレッサーによって制御されていること、およびそのリプレッサーを特定できたことも、本年度における特筆すべき成果である。
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