研究概要 |
量子多体効果は多様な物理現象を起こす凝縮系物理学において、根幹をなすものである。そのもっともな顕著な例は、モット絶縁体相である。モット絶縁体相においては、粒子間の強い斥力相互作用によって、伝導性が強く抑制される。これまでに、冷却原子系の進展によって固体中の電子系に対応したモット絶縁体相が光格子中の原子系において近年、アルカリ原子において実現した。本研究においても、イッテルビウム(Yb)原子のボース同位体<174>^Yb, <170>^Yb)においても、超流動-モット絶縁体転移を観測した。これについては、すでに、以前の研究報告書においても報告した通りである。本年度は、昨年度に引き続き、3次元光格子中のボース原子と多成分フェルミ原子からなる混合量子縮退に着目し、強相関原子混合系(Strongly-Correlated Atomic Quantum Mixture System)の実現とその振る舞いについて研究を行った。本年度における主な研究成果は以下の3つに分けられる。(1)異種間が斥力相互作用する2つのモット絶縁体は、2つのモット絶縁体の大きさによって、混合モット絶縁体状態(Mixed Mott Insulator)と呼ばれる新しい量子相と相分離した絶縁体相(Phase Separated Insulators)の間のクロスオーバーが起きることを実験的に明らかにした。(2)異種間が引力相互作用する場合は、2つのモット絶縁体の大きさによって、異なる複合粒子(Composite Particles)が形成されることを実験的に示した。(3)相互作用し合う2つのモット絶縁体における熱力学特性を明らかにした。斥力側では、Pomeranchuk効果により冷却の効果が働き、一方で引力側では"anti-"Pomeranchuk効果が働き、加熱が起きることを示した。
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