1.網羅的基質同定法(MFAS法:M__-utant F__--box protein A__-ffinity purification of substrate with S__-ILAC)の確立 本研究では、全てのF-boxタンパク質に応用可能な網羅的基質同定法の構築を目標としている。このため、最初にモデル系として既に酵素-基質関係が明らかになっているSkp2-p27系(F-boxタンパク質=Skp2、その基質分子=p27)を用いて結合条件の最適化を行った。この結合をベースとした方法の欠点は、F-boxタンパク質と基質が結合すると基質分子は速やかに分解されてしまうということだったが、われわれはSkp2のF-boxドメインへ特殊な点変異を導入することにより、p27とは結合するが分解しない状況を作り上げることに成功し、この問題を克服した。また、逆にこの性質を利用して野生型と変異型Skp2への結合性の差異を定量的プロテオーム解析法であるSILAC (Stable Isotope Labeling by Amino acids in Cell culture)法で測定することにより、容易にp27を含む基質候補分子の同定が可能となった。われわれはこの方法で、p27以外にもサイクリンDやサイクリンEといった複数の既知の基質を同定・定量することに成功している。 2.新規基質探索への応用 次にわれわれは、別のモデル系であるFbxw7-c-Myc系(F-boxタンパク質=Fbxw7、その基質分子=c-Myc)を用いてMFAS法の適応を検討した。その結果、MFAS法で変異型Fbxw7特異的に結合するタンパク質として、既知の基質であるc-Mycを同定した。われわれはこの他にも、Fbxw7の基質認識配列を含んだ6つの新規基質候補分子を同定した。この候補分子の中にはc-Mycと同様、細胞の増殖促進に関わる転写因子も含まれており、Fbxw7が増殖促進因子を特異的に分解するF-boxタンパク質であるという現在の見解に一致している。現在、これらの基質候補分子の詳細をFbxw7ノックダウン細胞やノックアウト臓器抽出液、過剰発現細胞にて解析中であり、ポジティブなデータを得ている。これらの基質については、Fbxw7による分解の生理的な意義の解析を細胞やマウス個体レベルで進めている.
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